自由研究発表



第1分科会(B会場)第1セッション



●座長 夏目 達也(東北大学)




■13:00-13:20 発表番号 A-101
スウェーデンの職業教育の動向
高橋 一夫(東京都立新宿山吹高校)


スウェーデンでは後期中等教育改革の実施が1993年からされ、従来の234年制の職業教育がすべて3年制となった。当初のナショナルプロラムも技術教育の重視から、技術プログラムが追加された。2000年には、職業教育の時間が増加され、2001年には見習い訓練制度の形態についての提案が諮問された。このようなスウェーデンの教育・労働市場の重視と企業のグローバル化への挑戦の現状を報告検討し、わが国の職業教育の在り方を考察する。



■13:20-13:40 発表番号A-102
ハバロフスク地方の職業教育再生への兆し
ーハバロフスクおよびコムソモーリスク・ナ・アムーレを中心としてー
水谷 邦子(芦屋大学)



ソ連崩壊後の10年は、政治、経済、社会面で体制変革の激動期であったが、教育面も例外ではなかった。連邦は地方や学校に権限を移譲したが、市場経済が順調に発達しなかったために財源不足をきたし、地方は中央から見捨てられた状況となった。1999年、2000年の現地調査をもとに、日本と縁の深いハバロフスク地方における職業教育の状況を報告する。



■13:40-14:00 発表番号A-103
職業教育の「高等教育化」の諸相
−ドイツの専門大学の事例分析−
寺田 盛紀(名古屋大学)


本発表は、世界的に進行する中等職業教育と高等教育の接続強化の職業教育学的意味合いを探るために、ドイツの専門大学(Fachhochschule)の展開、とくに1990年代以降試みられている「デュアル学修課程」をめぐる議論、実態を明らかにする。方法的には関連する二次資料を整理しつつ、若干の典型事例のヒヤリング調査(で得た資料)によって補足、焦点化し、分析するというアプローチとなる。職業教育の概念変容(拡大)に注目したい。



■14:00-14:20 発表番号A-104
ドイツの基礎学力論と職業能力開発
坂野 慎二(国立教育政策研究所)

ドイツにおける現在の教育論争点の1つに基礎学力問題がある。その起点は、国際学力調査の結果が良くなかったことに起因している。教育サイドから示された職業能力開発に関連して提案された点は次の通り。(1)生涯学習におけるフォーマル及びインフォーマルな学習。(2)自己責任の引き受け。(3)大学教育と職業訓練の乗り入れと大卒者数の増加。(4)学校中退者・職業訓練放棄者数の減少。(5)移民の教育と職業能力開発。



■14:20-14:40 発表番号A-105
90年代以降の米国における職業教育訓練政策
谷口 雄治(職業能力開発総合大学校)


米国では、70年代から80年代後半にかけての長期にわたる経済低迷を背景として、多数の企業が外部労働市場による雇用関係に変えていったといわれる。そこで、労働市場政策の観点から米国の職業教育訓練政策について、クリントン政権以降の約10年を概観し、National Skill Standards ActおよびWorkforce Investment Act等による施策にみられる特徴と意味を考察する。



■14:40-15:00 発表番号A-106
百年の歴史から見る韓国の工業教育の発展方向
○盧泰天・金永鍾(忠南大学校)・金正植(東京工業大学客員研究員)


百年の歴史から見る韓国の工業教育の歴史的な背景と発展過程そして経済発展と共に工業教育が成長し社会に及ぼした影響を明らかにし、21世紀に迎え100年前のの原点に戻ってこれからの知識基盤社会に対処するための新しくスタートしなければならない転換期にこれからの発展方向について示す。







第1分科会(B会場)第2セッション



●座長 大河内 信夫(千葉大学)




■15:10-15:30 発表番号A-201
手工教育の成立期における経済的契機と教育的契機
−オットー・サロモンの言説を手がかりとして−
横山 悦生(名古屋大学)


普通教育としての手工教育は、19世紀後半に北欧において成立したとされてきた。本発表では、スウェーデンのオットー・サロモンの果たした役割に注目し、手工教育の成立過程における経済的契機と教育的契機について、オットー・サロモンの言説を手がかりに考察する。



■15:30-15:50 発表番号A-202
谷本 富の新教育思想
−体験、手工科教育論にかかわって−
森山 賢一(常磐大学 人間科学部)


本研究は明治30年代の樋口勘次郎の活動主義を受けて、日露戦争後の我が国教育界における新教育思想に大きな影響を及ぼした谷本富の新教育について体験、手工科教育論に焦点をあてて考察、吟味したものである。この時期の谷本の新教育思想を知る手がかりとしては『新教育講義』(明治39年)および、『系統的新教育綱要』(明治40年)をあげることができるがこれらの著作を中心に論じることとするが、特にその当時の我が国の歴史的背景と彼の体験、手工科教育論の関連について考えてみたい。



■15:50-16:10 発表番号A-203
産業教育振興法制定後の高校職業学科の教科書の発行状況に関する研究
佐藤 史人(和歌山大学教育学部)


本研究は、高校職業学科教科書について、教科書会社の編纂・発行の実態と教科書検定の実施状況を分析する事によって、産業教育振興法がねらいとした産業教育の教科用図書に関する措置の具体的な内容とその意義を解明することを目的とする。職業学科の教科書は多種多様なものが必要とされる反面、個々の需要数は多くはなく、戦後の検定制度の下で困難に陥っていた新教科書の編纂・発行は産振法制定によって充実・促進させられた。



■16:10-16:30 発表番号A-204
技術・家庭科の評価の本質と国政研の「目標に準拠した評価」、
その指導要録・内申書の評定記入方法の問題点

池上 正道 (立正大学非常勤講師
)

2002年4月から、中学校の教育現場では評価問題で深刻な事態が進行している。教課審答申「児童生徒の学習と教育課程の実施状況の評価の在り方について」に基づき、これまでの「相対評価」をいわゆる「絶対評価」にする指導が強力になされている。国政研の「参考資料」で教育現場は大混乱に陥っている。特に「技術・家庭科」という教科の本質から見て国政研の「絶対評価」を批判し、現場教師の対応もふまえ問題点を明らかにしたい。



■16:30-16:50 発表番号A-205
栽培学習の体系化に関する実践的考察
−小学校における栽培学習の展開をもとに−
○千葉雄司・相場博明(慶應義塾幼稚舎)、森山賢一(常磐大学人間科学部)


本研究は小学校における栽培学習の体系化について実践をもとに考察したものである。栽培は、小学校の理科、生活科、総合的な学習の時間、クラブ活動など多くの授業や活動において実施されているが、断片的内容となったり、重複が多かったり学習効果が上がらなかったりすることが指摘されている。
そこで本報では学校教育において栽培学習が充実したものとなるために、カリキュラムと教育内容を中心に吟味したものである。





第2分科会(B会場)第1セッション



●座長 松谷由紀子(神奈川県立川崎高等職業技術校)






■13:00-13:20 発表番号 B-101
高校工業教育に対する工業に従事している卒業者による評価U
−鹿児島県立鹿児島工業高等学校の事例−
○長谷川雅康(鹿児島大学教育学部)、佐藤史人(和歌山大学教育学部)


本研究では高校工業学科を卒業して産業界で工業技術に関わる人々が、高校工業学科で受けた工業教科の内容をどのように評価し、その影響や今後の工業教育をどう考えているかを追跡調査している。これまで4校調査した中で、標記工高の事例を報告する。全般的には、専門科目で学ぶ実際的技術的知識と理論の基礎の評価が高い。学科による違いが相当ある。工業教育と就職先の仕事との接続関係に分野ごとの相当な粗密差が存在している。



■13:20-13:40 発表番号 B-102
高校-大学の接続と職業体験的学習
福岡 哲朗 (福岡市立博多工業高等学校)


高校教育と大学教育の接続のあり方を考え直す動きが高まっている。しかしながら、先行研究において、高校−大学両段階で多様な期待を込めて実施されている職業体験的学習についての高大接続の視点や、高大接続に向けての展望について光が当てられていない。
そこで、本研究ではインターンシップの全国実態調査結果の検討により、発達段階に応じたキャリア教育の視座から高校−大学の接続およびそのための連携について考察する。



■13:40-14:00 発表番号B-103
新しい医療職の発生と養成教育に関する問題点―救急救命士を中心にー
宮本京子(九州大学医学部附属病院 腫瘍センター)


医療の発達と共に、近年救急救命士や臨床工学士など国家資格としての新しい医療職が生まれてきている。これら医療職の発生には、医療の専門化によるものと社会的ニーズによるものの2つのパターンがあると考えられる。この中で、社会的ニーズにより発生した救急救命士の発生とその養成課程について、審議会資料やインタビュー調査等から検討した。その結果、救急救命士の業務やその養成課程には、問題点が見られたので報告する。



14:00-14:20発表番号B-104
ビジネスキャリア制度の設定意図と制度の変化について
−ホワイトカラー職務能力評価試験設定の意味−
新井吾朗(職業能力開発総合大学校)


それぞれの資格には、設定の目的がある。近年、労働市場整備の一貫として、資格には職業能力を適正に評価する機能が期待されている。こうした期待は、それぞれの資格が設定される際の目的や資格の認定方法に、どのように影響するのだろうか。この点について、本報告では職業能力評価制度として設定されているビジネスキャリア制度を検討する。制度発足時と今年度行われた制度の改善時に行われた議論から、制度に対する期待の変化とそれに伴う制度改善の意味を考察する。
■14:20-14:40発表番号B-105
産業教育における教材ソフトウエアの著作権を巡る問題−中古ゲームソフトの販売にかかる著作権の検討から−
桜井 博行(職業能力開発総合大学校 能力開発研究センター)
著作権法26条のゲーム・ソフトへの適用の妥当性についての論議が随所でなされており、これについて一定の整理が必要になった。関係する判例及び判例評釈の参照と論点整理を行い26条の解釈を検討し、ゲームソフトへの26条の適用は妥当であるが、これによって認められる頒布権は消尽するとの解釈が適当であろうとの見解に収束した。






第2分科会(B会場)第2セッション



●座長 永田萬享(福岡教育大学)







■15:10-15:30発表番号B-201
「企業内教育」という言葉の妥当性をめぐっての一研究
三宅章介(東海学園大学)


「企業内教育」の分野においては、企業内教育、企業内教育訓練、企業内研修、職場内研修、職場内教育訓練、能力開発、人材育成など、様々な言葉が用いられている。また、最近では、「自己啓発」の重要性が論議されているが、果たしてこの言葉は科学的な用語であるのであろうか。同じ言葉でも、使用法が異なると現象を正確に伝えることが困難になる。本研究では、「企業内教育」をめぐる言葉についての体系化を試みる。



■15:30-15:50発表番号B-202
企業内における研修コースの開発手法
鯉江 充治(株式会社 デンソー技研センター 技能研修部)


生産設備の製作・保全に携わる技能者の育成を支援する研修の開発手法について紹介する。この手法は、@「職場で必要な技能の抽出」、A「全社標準としての必要技能一覧の作成」、B「研修要素の抽出」、C「必要な研修コースの体系化」を基本的なステップとしている。また、これらの資料をイントラネット上にて公開し、職場の変化に追従した研修コース開発ができるようにした“しくみ”も紹介します。



■15:50-16:10発表番号B-203
技能五輪データ―に反映された職業訓練
−トヨタ工業技術学園の場合−
蘇 鶴鳴(高千穂大学大学院 経営学研究科)


若干の(できるかぎり、同業種の)他社のデータ―とトヨタ工業技術学園のデータ―と比較し、分析することによって、どのぐらいの差があるかを明らかにしてみたい。それを基づいて、「なぜ」と「どうする」について, トヨタ工業技術学園のカリキュラムを取り上げ、試論をしてみたい。



■16:10-16:30発表番号B-204
質問紙調査による安全行動規定要因の分析
○赤塚 肇・深澤伸幸(鉄道総合技術研究所)


産業災害や労働災害を防止するためには、作業者自身が安全な行動をとることが必要不可欠である。職務行動あるいは動機づけに影響を及ぼす要因として、職務満足ほか、いくつかの要素が考えられる。また、安全行動については安全意識が行動の規定要因と考えられている。具体的な産業として鉄道を取り上げ、鉄道運転士を対象とした質問紙調査を行った。いずれの要素も安全行動の励行の程度と関連を有していることが示された。



■16:30-16:50発表番号B-205
職業訓練におけるeラーニング試行
福元 基(九州大学大学院


このため、政府は、「ものづくり基盤整備基本計画」(2000)を策定し、21世紀の製造現場を支える人材の育成に着手した。一方、昨今の急速なIT技術の進展に伴い、企業がこれまで以上に発展していくためには、IT化に対応できる基礎的な能力や実践的なIT活用能力が求められてきている。そこで、国(雇用・能力開発機構)は求職者、在職者を問わずあまねく幅広い労働者を対象にIT学習支援事業を展開してきた。
昨年は延べ106万人の労働者を対象にIT教育訓練を実施した。
本縞では、この事業の一環として更に多くの労働者が自主的にIT化に対応した職業能力の開発に取り組むため、e-learningの試行を行ったので、その結果について報告する。






END