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 技術・技能教育研究所・森 和夫ホームページ 




キーワード解説
「技術・技能伝承とは」


森 和夫





 我が国の技術・技能伝承は今日、どのようになっているのだろうか。もともと、技能伝承は日本では以前からよく行われていた活動である。いわば後継者養成として技能に限らず幅広く行われていた。


2007年問題で技能伝承がクローズアップ
 団塊の世代と呼ばれる人々が職場から定年退職で離職することになって、にわかに技能伝承が問題化した。2007年から3年間の間に、約680万人の労働者が職場から去ることになったのである。この大半が技能労働者であることから問題となった。技能は短期間で身につくものではなく、比較的長期の教育が必要とされるからだ。業種で言えば製造業、建設業で大きな影響をうけるとされる。一方、雇用延長で何とかすればよいとする考え方もあるが、これはごく限られた熟練者に限定される。雇用延長の対象者は5%程度と考えられる。
 技能伝承活動は10年前までは希に行われていたが、今日、行うことが当然のことのように扱われるようになった。しかし、全ての企業がこれに成功しているわけではない。多くは現場任せにしているようである。一方、技能伝承をマニュアル作りと誤解している企業もある。マニュアルに整備することに奔走し、人が育っていないケースも見られる。決して技能マニュアルの整備ではないのである。マニュアルのアウトソーシング、外注化で解決させようとする企業もあるが、肝心の技能分析や暗黙知の抽出が手薄になっていて、実質的には伝承の成果が十分ではないものが多い。これとは対照的に経営の問題として捉え、全社展開で行うことで成功している企業は多くなってきた。技能伝承は人材育成なのである。そのことに早く気づき、適切な方法論で展開することがよい。


技能伝承はなぜ難しいのか
 「言葉で表現できない」ことが最大の難関である。「熟練に要する時間がかかる」ことだ。「体で覚える」ことが要求される。自ら体験、経験しなければ獲得はできない。これらのことは一見易しいことのように受けられがちであるが、実際に始めて見るとその難しさに気づく。例えば、言葉にできないことは見せればよいと考える。だから、ベテランの行動をビデオに撮ってみせればよいと言う。各方面で、ビデオにする取り組みが行われているが、思うように伝承は進んでいない。アウトソーシングして、ビデオマニュアルはできたが、それは単に映像記録の範囲を超えないシロモノだ。何故なら、技能分析がされておらず、見どころやカン・コツがわからないままに映像だけが収録されているからである。カン・コツを明確化するのも難しい。そもそも、カン・コツをベテラン自身が気づいていないのである。自然に、無意識にしていることをどうやって教えることができるだろうか。これまでに、200人以上の熟練技能者に対してカンコツインタビューをしてきたが、自らの技能に含まれるカン・コツに気づいている人は少ない。だから、適切なインタビューで引き出してあげる必要がある。良い聞き方でインタビューすれば良い結果が得られる。さらに体系的な整理や科学的な裏付けをとることができれば訓練は加速されるのだが、それらが無いということが多いのである。



技能伝承は「暗黙知の管理」として行えばよい
技能伝承はどのようにして進めればよいのだろうか。私は、「暗黙知の管理」として行うことがよいと考えている。技能に限らず、暗黙知は常に生まれるものであり、それはやがて整理して伝えなければならないものである。だから、暗黙知を管理するという発想が大事になるだろう。







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