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本当のOJTとは何か

 企業で「どんな教育をしていますか」と聞くと必ず返ってくる回答は「OJTでやっています」である。これはどの会社に対して聞いても同じ回答なのである。100%信じてよいのだろうか。いくつかの企業を除いては、私は疑問だと思う。辛辣にいえば、それ以外に回答できないのである。では、実際にどうやっているかと聞くと、「現場がしっかりやっていると思う」という。状況も把握できていないらしい。特に経営者は実情を知らないらしい。私は、そのOJTで結果を出しているかどうかが聞きたいのである。「結果が出ているかどうかはわからないが、仕事を通じて教えているはずだ」ということだろう。
 まず、OJTは形が問題なのではない。どんなスタイルで教えているかが問題ではないのである。形でみると指導者と新人が同じ仕事の中で教育しているように見えることだ。外見上、OJTと言うだけである。似たような話がある。技能伝承でよく行われるスタイルがペアシステムである。ベテランと後継者をペアにして仕事をさせながら指導を期待するものだ。実は、外見は満たしているが、実質的には何も満たされていない。それは結果をチェックすればすぐにわかることなのである。本当のOJTとはいったいどんなものなのか・・・。
 ここまでで、およその推測がつく。現場OJTは目標設定と方法論でミスしているから、「みかけOJT」となっているのだ。目標設定がないままに、学習項目が整理されないままに、形だけが先走りしていて、結果のチェックもできないOJT?が行われているのである。

OJTの良さをフルに発揮するには

 OJTの良い点は何にあるかというと、その実践性、即戦力、実用性・・・というところにある。企業の求める教育の大半はここにあるといっても良い。どんなに良い教育でも、数年先に実るというのでは、明日どうするかという期待には応えてはくれない。だから、OJTは短期的な教育効果を狙う場合には有効だ。また、現実対応という観点から見ると、高度熟練の学習の場合には最終的にはOJTが効果を発揮する。ベテランのもっとも大事な肝になる部分はベテランと共に生き、実践していくことで学ぶことができるものだ。これらの特性を十分に発揮させることに成功すればOJTを絞りつくしたと言える。
 OJTを成果あるものに仕上げるにはどうしたらよいだろうか。まずは、学習者を把握すること、そして、教えるべき仕事内容を整理することだ。この両者をいかにしてマッチングさせていくかが重要な点となる。この検討に基づいてOJT教育の目標設定を行う。当然ながら、目標設定は妥当なものでないと機能を発揮しない。相手にあわせて内容に合わせて決めていくのである。場合によっては訓練期間や指導方法そのものの工夫も要するだろう。目標設定は評価と連動しているので、目標にあわせて評価項目が決まる。このようにハンバーガーのバンズに相当する部分が確実に構成されていてはじめてOJTといえるのである。この辺が経営者にはなかなかわかってもらえない。もちろん大事なハンバーグやレタスなどの部分は指導方法のことを指している。
 このように考えてくると、理解の早い方は、OJTも結構奥が深い・・、やり方を見直さないと・・・と感じることだろう。実はその通りなのである。普段やっていることを「やってみせ、やらせて見せて、確かめる」という旧来のOJTスタイルでは本領を発揮することは少ない。

見直そうOJTの方法論

 OJTは職場教育では欠かすことのできない方法であるが、これを新しい視点で見直してみる必要がある。OJT指導の根拠とするものに作業標準書が取り上げられるが、これでよいかである。





(続く)


OJTは指導者で決まり
当たり外れのないOJTを確保する方策

拡張型OJTの勧め

文責:森 和夫