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 技術・技能教育研究所・森 和夫ホームページ 





技術・技能継承チェックリスト





森 和夫  技術・技能教育研究所



技術・技能伝承を進めるにはそのための環境がどの程度あるかをまず確かめる。
ここではそのチェックリストを紹介しよう。


@経営戦略は明確になっているか、技術・技能継承の大切さが共通認識としてあるか。
 企業活動にとって技術・技能継承の重要さが認識されるのは企業に未来戦略があるからである。もっと平たく言えば、企業活動の明日を描いているからこそ技術・技能継承が問題となるのである。従って、経営者は「これからの企業活動の展望を描いているか」が問われる。経営戦略があってこそ、重要な技術・技能とそうでない技術・技能とが選別できるのである。このことが定まっていない場合には技術・技能継承も迫力が無いものになってしまうだろう。これはとりもなおさず、「@必要性の認識」につながる。





A技術・技能継承の推進に対する企業風土が整っているか。
 人材育成もそうだが、技術・技能継承ではこれを推進する上で、逆風があるとなかなか進まないものだ。社内全体が、このことに一丸となって向かっていると言う状態であれば追い風となり、スムーズに展開できる。もしも、このような条件が無い場合には、特に経営者、中間管理者が配慮しなければならない。

B技術・技能継承の体制や支援の仕組みがあるか。
 人を大切にしたり、人を育てるという企業風土を基礎にして技術・技能継承の仕組みがあるかということである。指導者と継承者の人的体制や、継承に必要な時間の捻出、必要機材・経費のバックアップなど技術・技能継承の支援があることが求められる。





C職場の技術・技能が書き上げられているか。技術・技能マップはあるか。
 自社で温存すべき技術・技能は何か、廃棄すべき技術・技能は何か、開発すべき技術・技能は何か。これらの検討がすでに完了しているかどうかである。このためには自社の技術・技能リストが書き上げられており、その内容の検討がしやすいようになっている必要がある。このツールが「技術・技能マップ」である。このマップが最新の状況に合わせて作成されていればよい。技術・技能マップは職場もしくは作業者ごとに技術・技能項目を出来るかどうか記載されていればよい。あるいは技能レベルが明記されていれば良い。これらの書類があるかどうかと言うことになる。





D指導者がいるか。あるいは指導者として気づきと自覚があるか。
熟練技能者が自らの技術・技能や継承の必要性に気づくことが大切である。熟練技能者が技術・技能継承の指導者となるからだ。指導の過程で技術・技能を表現したり指導することによって熟練技能者へのプラスの効果が見込まれる。これらはすべて「気づき」を基礎にしている。気づくと何が変わるのだろうか。それらは、技術・技能の位置づけの再確認、技術・技能の大切さの実感、企業戦略と技術・技能の動向を把握、技術・技能継承の危機の実感、後継者の不在の実感である。つまり、意識的に計画的に技術・技能の継承を図らないと伝承できないことを理解するのだ。そのうえで自らの努力の方向を見い出し、何をなすべきかを明らかにできる。単純に見えるが、これが技術・技能継承の鍵を握っているのである。「教えることを教える」には「気づき」を欠かすことができない。





E 指導準備や技術・技能マニュアル、教材はあるか。 優れた指導方法はあるか。
 伝えるべき技術・技能の要点や、技能分析結果や、学習に必要なビデオ映像やマニュアルなどの教材がぜひとも必要である。この他に指導者が優れた伝達方法を身につけていなければならない。このためには指導方法を工夫したり、練習したり、学んだりすることも必要となろう。

F学習者は準備性・能力・適性・学習意欲があるか。継承必要性の認識があるか。
 意義や意味の認識もそうであるが、本人の意欲や自覚が大切な要素になる。能力、適性、将来性、学習意欲などが挙げられる。学習者にこれらが無い場合には急にではなく、徐々に指導していくことが大切だ。






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 A5版・280頁定価3,675円

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