看護師の職業生涯とクリニカルラダー
森 和夫 技術・技能教育研究所
クリニカルラダーがなぜ必要かについて考えたことがありますか。
そして、看護師はなぜ教育が必要なのでしょうか。しかも継続教育です。ここでは看護師の職業生涯(看護師として職業に就いてから、その職業から離れるまで)という視点から考えてみましょう。
産業界の人材育成、能力開発と比較しますと、看護の教育体制は優れていると思います。看護基礎教育、看護師の資格制度、そして、各病院に設けられた教育委員会による院内教育の体制があります。何故でしょうか。
医療現場では日々、変化しているからです。患者ニーズの多様化、医療技術の革新、病院経営から革新、新システムの稼働、薬剤・治療方法の革新に伴う看護の対応など、どれをとっても目先の対応ではこなせないからです。
目先の対応ではないということは、本質的な対応を求めているということです。これには教育が欠かせません。時代に応じた、かつ病院に応じた教育が欠かせないのです。
看護師の職業生涯は「看護師として職業に就いてから、その職業から離れるまで」としましょう。看護基礎教育を終えて、病院などの看護現場に就職し、看護に携わります。新人から中堅にと育っていきます。そして、主任、師長などの階段を上っていきます。中には専門看護師の道をめざしてプロフェッショナルとなる人も出てきます。また、配属先によってはそこの独自の専門性を身につけます。やがて、看護師の仕事から離れる時がきます。この全期間を看護師の職業生涯と呼びます。
看護基礎教育を終えているのに、なぜ新人教育を受けるかについて考えたことがありますか。新人看護師はプライドを傷つけられる想いでしょう。しかし、医療の現場はそれほどに多様化し、覚えなければならないことが多くあるからです。リーダーや主任などの業務に携わる看護師も同様です。主任になったからと言って学習なしに責任を果たすことができるでしょうか。その時期にふさわしい教育が求められます。このように各時期に応じた継続的な教育が必要なのです。これを継続教育と呼びます。
継続教育は場当たり的に行うのではきちんとした目標に近づくことはできません。そのためにはPDCを回すことが大切です。計画を立てて、実施し、それを評価する活動です。
継続教育は計画的に展開するということは、看護師の職業生涯という長期的視点が必要です。教育委員会では継続教育のプランを立てる際に、看護師の各時期の役割、業務内容に合わせ、かつ個々の看護師の状況に合わせることが大切です。この時に役立つのがクリニカルラダーです。
教育を実施した結果がどうなっているかを「見える化」するためのツールがクリニカルラダーなのです。これを基に処遇や仕事分担、学習成果確認をして新たな教育計画へ発展させます。
クリニカルラダーは看護師の職業生涯をいくつかの時期に分けて、その時期に求められる職業能力を明らかにし、評価し、実情に応じて教育計画を計画・実施することです。図は各時期の包括的目標を表しています。
また、ラダーごとの教育の体系として図のように考えることもできます。看護研究、学生指導、OJT指導についてこのように組み立てます。このようにすればラダーを用いた院内教育が整備されると考えます。
各病院でクリニカルラダーを重視しているには理由があります。ラダーは優れた人材育成には欠かすことのできないツールだからです。
看護師の職業生涯という視点で考えることで、前向きにとらえることができ、活用の広がりも出てくるのです。
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※この他、ラダーに関する情報は→こちら
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「看護人材育成」誌2016年4・5月号に、クリニカルラダーの記事を掲載。
「初めてでも安心!CUDBASを用いたラダーの作成・見直し方法」
1. いまどきのラダーの動向と見直しの意義
2. 見直さなくて済むラダーはどう作成するか
3. 現行ラダーを見直して作成するにはどうする:か
4. ラダーの備えるべき条件を実現する
5. ラダー文章の改訂コンサルテーションの事例
6. トライアルのコンサルテーションの事例
7. 機能するクリニカルラダーを求めて
2019年6月、「看護人材育成」誌にクリニカルラダーと能力マップに関する記事を掲載。
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