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 技術・技能教育研究所・森 和夫ホームページ 


クリニカルラダー作成の問題 
2017/1/14改訂




〇クリニカルラダーを作成することは、それらしきものは簡単にできる。しかし、使用してみて「これでよいのか」という現実に突き当たる。ここから先は妥協してしまうか、あきらめるかのいずれかになっているのではないか。しかし、これを解決することが、ラダー作成の宿命でもあり、良いラダーとなる分かれ目にあると判断すべきだ。

〇ラダー作成の問題の第1は評価者によって評価得点が異なることである。評価基準がわかりずらく、解釈に差が出てしまうのである。第2は優れた看護能力の保有者と劣る能力保有者の得点に差が無いことである。例えば5段階評価とする時に大半が3になってしまうのである。優れた能力の保有者は高い得点が与えられ、低い能力保有者は低い得点が与えられる必要がある。第3はラダー項目が自病院で求められる能力項目を網羅しているかである。漏れや欠けの無いリストが求められる。他病院からのコピーでは不十分な場合が多い。第4に作成者が一部の限られたメンバーで作成する場合、偏った項目設定になる懸念がある。第5は運用と改訂の問題である。ラダーは定期的に見直しと改訂をする必要があるのだが、そうなってはいない現実がある。これは方法論としての困難さが背後にあると推定される。第6はクリニカルラダーはもともと看護の継続教育のために作成するものだが、作成・評価と院内教育が分離してしまい、教育に反映していないことが多いのである。その活用の仕方、教育計画への展開の仕方が十分に配慮されていないのである。

〇ラダーはその病院独自のものを作成しなければ機能しないものだ。例えば、他病院のラダーの中からピックアップして作成したものは使えないことが多い。経営組織が違い、病院の立地や規模、看護体制、病院の機能、理念が違うのにラダーが同じであるはずがない。例えばリハビリテーション病院と大規模な総合病院ではラダーも当然、異なる、看護のジェネラリストとしてのラダーはもちろんのことだが、診療科によっても病棟によってもラダーが違うはずである。どの病棟でも一般ラダーのほかに専門ラダーが必要となることは当然のことだ。最近は専門ラダーを作成することが多くなってきている。看護全般の一般ラダーから専門看護ラダー作成へと変化しつつある。筆者のかかわった範囲では、ICUラダー、感染症ラダー、医療安全ラダー、精神科ラダー、小児科ラダー、整形外科ラダー、新生児室ラダー・・・などが作成されている。看護師長が自分の担当病棟のスタッフだけのラダーを作成することもよい。このように病院の特性に合わせて小回りの良い作成をするとよい。

〇私たちはCUDBAS手法を使って能率的にラダー項目を書き上げることで短時間の開発を進めている。どんなに長期間かかったとしても6か月もあれば実用的なクリニカルラダーを作成できる。CUDBAS手法は看護実践能力を書き出すには効果的な方法で、瞬く間に実際の必要能力を集めることができる。
5〜6人で、3時間もあればラダー項目が書き上がる。しかも、重要度順に、配列してある。詳しくは「CUDBASとは」「クリニカルラダーの作成の方法」を参照いただきたい。

  

〇このようにハイスピードで書き上げまではでき、一般にラダー項目はこれで実際の評価に使用していることが多い。
クリニカルラダーを作成することは、ここからが大事な作業になる。もっと詳しく見ていこう。

ラダー評価項目の文章の問題
○他業界でも同様のことがあるが、医療関係者、看護者で日常使われていることばに「曖昧」な言葉が多いことだ。特にマインドを扱う用語は不明瞭な用語が多く見られる。一般的に使用されている用語は不明瞭である。一般用語ほど曖昧さを助長するものはない。例えば、「患者によりそう看護・・」と書かれることがあるが、評価する際に優れた看護とそうでない看護とを明瞭に分けて5段階評価できるだろうか。例えば「確認する」とは何かである。確認とは何をどうすることなのかが明らかにならないとならない。文章に不備があることも多い。例えば対象は誰かが書かれていなかったり、対象者の範囲が書かれていないことはよくある。「手順通りできる」と書いてあっても、固有名詞ではないためにどんな「手順」なのかが一致しない。
○評価項目を実際に評価する立場で点検すると下記のようなコメント分類になった。
  1 具体的にして下さい
  2 限定して下さい
  3 分けて下さい
  4 良いと悪いの違いは何ですか
  5 能力ではありません
  6 1か5になりませんか
  7 相手は誰ですか
  8 その意味は何ですか
  9 ・・・とは何ですか
  10 程度を書いて下さい
○ラダーはその文章で正しく評価できることが大切だ。判断にブレがないこと、5段階評価できること。優れた人が高得点で、劣る人が低得点になるように書き上げなければならない。ラダー評価を自己評価で行うと、新人ほど高得点で、ベテランほど低得点になることがある。これは文章に含まれている意味の解釈が一定でないから起こるのである。

ラダー評価者による問題
○正しい評価が行われない大きな原因のもう一つは評価者による違いである。評価者間で認識が違うと評価結果も違う。評価の根拠は何かが違うこともある。さらに評価者がどれほど評価対象者を観察し、判断できるかという要因が加わる。
○評価者間の認識を同一にするには判断基準の調整が必要になる。どんな人が「5」で、どんな人が「3」かを一致できるよう基準を示すことだ。評価対象者の観察方法についても同一の場面、条件設定でできればよい。
○評価する際に重要なことは「いつ、どんな場面で、何をもとに」評価するかである。通常、ラダー評価の期間は決められているので、その期間中のいつに行えば適切な評価ができるかで考える。さらに、どのような場面で評価するかも設定できれば逃すことはない。何をもとにとは報告書や、観察記録や帳票類などの手がかりをさしている。

問題をどうすれば解決できるか
○ラダー項目の文章点検が完了したら、トライアルを実施する。トライアルは次のように行う。
トライアル評価者2〜3名がよく知る人物「5(優れた上位者)」、「3(普通の中位者)」、「1(劣る下位者)」について、同時に評価得点を記入する。その結果を分析して評価の一致度を検証すればよい。不一致は何から起こるかを検討すれば良い項目に改善できる。下の図のように評価者Aと評価者Bでそれぞれ3名の対象者を評価するとき、評価者AはA5>A3>A1という得点を示し、 B5>B3>B1という得点を示す。更に、A5=B5 A3=B3 A1=B1であると良い。
このように評価結果が出るかどうかを検証するのである。
○トライアル結果を整理してみると、評価者間で違いが出る原因は評価項目の文章にあるか、観点のずれはなぜ起こるか、どうして評価が分かれたのかを話し合うと修正のための手がかりを得られることが多い。この作業を完了すれば、ラダーとして完成度の高い内容にすることができる。


○評価をする側のやるべきことは何かを示す「ラダー評価ガイドライン」を作成して、評価者打ち合わせ会で判断基準の統一を図ると良いだろう。


クリニカルラダー作成の先へ
クリニカルラダーを作成したら、それによって評価し、教育計画に反映させることが大切である。単に評価することだけが目的ではない。教育計画を作成し、指導を実践して結果が出るのである。このためには能力マップとして整理することが良い。これらについては「能力マップ」を参照いただきたい。

     
※ラダーに関する情報は→こちら 




 
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能力マップの作り方、教育計画の立て方について記載しています。Amazonで購入できます。