本文へジャンプ         本文へジャンプ        

 技術・技能教育研究所・森 和夫ホームページ 





キーワード解説「講義と演習の違い


森 和夫  技術・技能教育研究所


講義と演習の違い
講義と実習の違いはどこにあるだろうか。
講義は指導者が「語りや問答」によって教材を仲立ちにしてあることを伝えようとする。
伝えたいことをまとめることで、筋道を立て、効果的に伝えることが可能だ。

学習者は講義を聞くこと、考えること、討議することなどで学習するる。
講義とは「指導者が語りや問答を通して学習内容を伝える方法」と定義しよう。
階段教室で大人数に対して行われることもあれば、小人数で行うこともある。

これに対して、演習は模擬的な対象を設定して学習者に学習内容を体験的に伝える。
実体験では無く、模擬的体験を構成する。
例えば文献研究の演習であれば、その文献を研究者としての立場から読み、解釈するプロセスを模擬的に体験していることになる。
数学の演習も現実の課題を与えることはせずに模擬的対象を用意することで有効な学習をもたらすようにする。

演習とは「学習内容を模擬的・総合的に学習者に体験させ、伝える方法」と定義する。
演習は実際のことをダイレクトに行うことではない。
演習は実際を模擬的に体験、経験、練習することが含まれている。
演習は実習のように自立的な直接的体験、経験は意図されていない。
あくまでも、指導者の関与のもとで進行する学習スタイルである。
ひとりで自転車で坂道を上るのでは無く、指導者の伴走のもとで坂道を上がるのである。
下図にこれらの対比を整理して示した。

講義には体験や経験、練習などは指導者が取り扱えば登場するが、扱わなくても講義であり得る。
講義の定義は幅広く解釈できるが、演習は極めてシャープに学習スタイルが設定されている。

演習も講義も学習者を育てる方法であるが、講義が指導者の行為・行動が重視されるに対して、演習は学習者の行為・行動が重視される。
講義よりも演習の方が学習者の主体的活動を期待していると指摘できる。

演習について調べるとゼミもしくはセミナーと記載されているが、演習の使われ方とこれらは必ずしも一致しない。
一般に言われている「ゼミ」や「セミナー」は演習の一つのスタイルと言うことが出来る。
また、指導者によってゼミの解釈や方法も多様であり、固定的には捉えがたい。
演習という言葉は、幅広い内容として、扱われている。

大学においては、「講義科目」と「演習科目」という設定をしている。これまでに述べたように、講義科目は講義による履修を前提とし、演習科目は演習による履修をさしている。講義と演習の違いを理解した上で学習することが求められる。








詳しくは下記の論文をご覧ください。
テーマ別PDF論文集まとめ [ 指導者論、指導方法論、大学教育FDは→こちら ]

1991  生産技術教育の方法理論(3)−スキルスタディ展開のバリエーション−  職業訓練研究誌 第9巻、単著
1990  生産技術教育の方法理論(2)−授業の分析によるアクティビティの抽出− .  職業訓練研究誌 第8巻、単著
1989  生産技術教育の方法理論−方法仮説と授業実験−  職業訓練研究誌 第7巻、久下・森(共著)







----------------------------------------------------

※森 和夫 略歴
職業能力開発、産業教育学・労働科学を専門とし、産業界を中心に活動。ライフワークは「技の上達」、博士(工学)。現在は技術・技能伝承、人材育成等のセミナー・講演の他、企業との共同研究、コンサルテーション、出版活動を行っている。現職は株式会社技術・技能教育研究所代表取締役、一般財団法人 職業教育開発協会代表理事。
主な経歴は東京農工大学教授(?2006年3月)、徳島大学教授(?2004年3月)、職業能力開発総合大学校教授、助教授、講師(?2000年3月)。学会活動は日本産業教育学会、日本人間工学会、人類働態学会、日本教育心理学会などで活動。海外活動はJICAよりマレーシア、ガテマラ共和国、ボリビア、フィリピンに海外短期派遣専門家として派遣され技術教育の指導者養成を実施した。

基礎研究とプロダクツの関連
 技術・技能教育研究所の研究は「技術・技能研究」「職業能力研究」「指導技術研究」の3分野から構成されている。これらによって技能習熟理論が構築され、能力構造論として集大成される。この内容の基盤にあるものは能力論である。この基礎研究から幾つかのプロダクツが生み出された。仕事分析手法CUDBAS、指導技術訓練システムPROTS、技能伝承システム、技能分析手法SAT、生産技術教育の方法理論、人材育成の見える化コンセプト、開発的指導法がそれである。これらのプロダクツは時代のニーズに対応して応用プロダクツを生み出した。社会で、企業で利用され進化することで、広大なアプリケーションが生み出される可能性を秘めている。








    ←こちらも参照ください。



 ←こちらも参照ください。




GINOUKEN Essential シリーズ(2020年版)は→こちら
技術・技能教育研究所の研究開発成果のバックナンバーから最新の成果までを収録
技術・技能伝承 、技能分析・マニュアル作成、大学教育FD・指導方法、 看護教育・クリニカルラダー、クドバス



技術・技能伝承論文集


2020年度、セミナーを実施中




暗黙知指導の理論と実際セミナー、募集中


技術・技能伝承の中核テーマ


能力把握に基づく人材育成の方法セミナー、募集中


能力マップ作成講座