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 技術・技能教育研究所・森 和夫ホームページ 





キーワード解説「実験と実習の進め方」



森 和夫  技術・技能教育研究所


実習の進め方
実習は教育の一環として行われるので、教育訓練のサイクルPDCで行う。一般に実習には目的、期間、方法、場所、内容、プログラム、評価を設定して行われる。
①実習目的: 習得すべき内容を箇条書きに列記するとよい。この実習で学習者は何を獲得することができるかを書く。
②期間: 目的を達成するために必要な時間、期間を設定する。集中的に行うものと、断続的に行うものがある。実習期間が長期にわたる場合は、さらに分割して、初期、中期、後期と分けることもよい。
③方法: 実習方法は単にその場その場を経験するということではなく、場面によって「説明」「観察」「記録」「練習」「実施」「責任分担」「報告」「発表」・・などの方法を用いる。
 また、学習者は実習日誌を作成することで実習の振り返りと指導者とのコミュニケーションを行うことがよい。
④場所: 実習の場所はその時期、その目的によって変える。単に実務に従事するからと言って、現場に張り付いていたのでは、学習の成果は半減する。臨機応変に最も適した場所を設定することがよい。
⑤内容: 実習項目、もしくは実習内容リストを作成する。実習目的をさらに分解して、行動目標レベルで書き上げることだ。
⑥プログラム: 行動レベルで書き上げたことを時間軸で整理する。同時に場所、指導者、所要時間も記載する。
⑦評価: 行動レベルの項目ごとに「できる」「知っている」「態度がとれる」水準を観察評価する。
 場合によっては試験したり、口頭試問によって成果を確かめる。日々の評価は実習日誌と簡単なコミュニケーションで確認する。

実習指導のポイント
実習指導に当たってはいくつかの注意点がある。
①指示することと行動させることのタイミングを最適にすることである。いつ指示を出して行動させるかは最大のポイントである。
行動しているときに中断して指示を出しても聞かない場合があるからだ。
だから、始めの指示は大変重要になる。また、途中で指示の変更をすることはより困難となる。
②指示する内容を明確にする。ダラダラとするのではなく、簡潔・明瞭に行う。
せっかく実習への意欲がある場面で長々と注意事項を話すのは得策ではない。
「~を、いつまでに、~する。もし問題が発生したときは~する」「主な注意点は~、~、~の3点です」のように行う。
③全体への指示が終わったら、学習者別に個別の指示やサポートを行う。
学習者全員が同一の状態ではないからである。得意、不得意も考えなければならない。
だからといって全ては指示しないようにしたい。
実習の特徴である自主的、創造的に、様々な視点から行動できるようにする。
④失敗しやすい点は予め知らせてしまうかどうかは、一概には言えない。
失敗させることも安全な範囲内であれば許容すべきであろう。ただし安全や、危険などから防御できる範囲にとどめるとよい。
仮に一人の失敗であっても全員がそれを共有することで学習の幅を広げることもあるのだ。
⑤実習の途中で、全員集めて、良い例、悪い例、工夫する点、今後の実習の仕方について知らせることは効果的である。
 歯切れ良く、区切りよく、たびたび行わないことが良い。
⑥実習日誌によって振り返りさせることは、実習の成果の向上をもたらす。
 「今日の実習の反省点、次回の実習でどうしたいか」を記載するだけでよい。
 私たちの研究によれば、実習日誌を用いたグループの方が、用いないグループよりもパフォーマンスの伸び、最終到達成果に顕著な差が見られることがわかった。
 また、記述の質的検討を行ってみると、最終日に高い到達成果を得る者は表現に違いが見られる。
⑦休憩のとり方は疲労程度と、学習困難度、集中力の持続という観点から最適な時間設定をしなければならない。

実験の進め方
これから述べる実験とは「学習としての実験」について述べることにしよう。
実験の結果が始めからわかっていると言うことはない。
仮説を立てたり、予想することが無ければ実験の意味は半減してしまう。
進め方は以下のようにすると良い。
①実験を行う目的を明確にして、その目的だけが検証できるように計画する。
 目的以外のことを考慮することは遠回りとなり、無駄も誤差も入り込むこととなる。
②仮説を立てる。仮説の明確化が基本である。不明瞭であると方法や進め方にブレが出る。仮説が無い場合は、軽い予想を組み立てる。
 実験と予想は裏表の関係にある。どんな実験でも、予想をまとめておくことが大切である。
③実験方法は目的を達成するための必要十分な内容とする。これ以外のことは考えない。
④実験の実施に際しては、誤差が混入しないように、何重もの防御を行うことである。
⑤結果の解釈は、論理的な思考と推論で、納得のいくものとしたい。
 仮説に反したり、予想とは異なる結果がもたらされた場合にはその理由をできる限り克明に追求する。
⑥結果の考察と結論に際しては、考え得ることを網羅して、明瞭に表現する。

実験本来のもくろみは何か
実験とは科学的検証の手続きと解釈すれば、より厳密に扱う必要がある。
学習としての実験に求めることはどこまでかと言うことを予め設定しておく必要があろう。
学習という枠組みを超えて、無駄な努力をすることは好ましいものではない。また、学習だからと言って安易に簡略化した実験も求めるものではない。
指導者はこのことを良く検討した上で、テーマごとに進め方を組み立てることである。
実験書と呼ばれる図書を見かけるが、優れたものは少ない。
予め、実験目的から、仮説、方法、考察の仕方に至るまで書かれていて、実験の本来の楽しみを奪うようなものが多い。
実験のおもしろみ、仮説作りの創意工夫と論理性などが失われる図書と言えよう。
これらに惑わされることなく、実験が本来持っている良さを受け止め、活用することが望ましい。
実験をコンピュータ上でシミュレーションする方法が良く行われるようになった。
しかし、これは近似的な現象表現、モデルとしての仮想現実の中で行うものの範囲にとどまる。
そのことを十分に認識して扱わなければならない。


 ←「実習と実験の違いについてはこちらを参照してください。








テーマ別PDF論文集まとめ [ 指導者論、指導方法論、大学教育FDは→こちら ]

1991  生産技術教育の方法理論(3)-スキルスタディ展開のバリエーション-  職業訓練研究誌 第9巻、単著
1990  生産技術教育の方法理論(2)-授業の分析によるアクティビティの抽出- .  職業訓練研究誌 第8巻、単著
1989  生産技術教育の方法理論-方法仮説と授業実験-  職業訓練研究誌 第7巻、久下・森(共著)



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※森 和夫 略歴
職業能力開発、産業教育学・労働科学を専門とし、産業界を中心に活動。ライフワークは「技の上達」、博士(工学)。現在は技術・技能伝承、人材育成等のセミナー・講演の他、企業との共同研究、コンサルテーション、出版活動を行っている。現職は株式会社技術・技能教育研究所代表取締役、一般財団法人 職業教育開発協会代表理事。
主な経歴は東京農工大学教授(〜2006年3月)、徳島大学教授(〜2004年3月)、職業能力開発総合大学校教授、助教授、講師(〜2000年3月)。学会活動は日本産業教育学会、日本人間工学会、人類働態学会、日本教育心理学会などで活動。海外活動はJICAよりマレーシア、ガテマラ共和国、ボリビア、フィリピンに海外短期派遣専門家として派遣され技術教育の指導者養成を実施した。

基礎研究とプロダクツの関連
 技術・技能教育研究所の研究は「技術・技能研究」「職業能力研究」「指導技術研究」の3分野から構成されている。これらによって技能習熟理論が構築され、能力構造論として集大成される。この内容の基盤にあるものは能力論である。この基礎研究から幾つかのプロダクツが生み出された。仕事分析手法CUDBAS、指導技術訓練システムPROTS、技能伝承システム、技能分析手法SAT、生産技術教育の方法理論、人材育成の見える化コンセプト、開発的指導法がそれである。これらのプロダクツは時代のニーズに対応して応用プロダクツを生み出した。社会で、企業で利用され進化することで、広大なアプリケーションが生み出される可能性を秘めている。








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