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 技術・技能教育研究所・森 和夫ホームページ 




キーワード解説

 「カン・コツとは何か」



森 和夫  技術・技能教育研究所




カンは「勘」と書く。
「感覚や感じ方、捉え方」をいう。

重要な感覚、感じ方、捉え方のことだ。
「勘」と類義語の「直感」には「推理・考察などによらず、感覚的に物事を瞬時に感じとること」とある。
このようにある事象を前にして、何かをすばやく感じとることをさしている。

例えば、重さを手で量るとき、どの程度の重さかを手の感覚で確かめるのである。
いちいち、はかりに乗せるまでもなく、瞬時に重さを判定することである。
「カンが働く」という言葉を考えると何かの原因や隠れている筋道を推測、判定することを指している。
このようなことは人間にとっては生活上でも、仕事上でも普通に行われているものだ。



コツは「骨」と書く。
辞書で見ると「体を支える堅いもの、ものの中心にあってそのものを保持するもの、要点、急所」といった意味がある。
骨は人体の要所要所を構成している。コツとは「要領、ポイント、要点」をさしている。
「要領が良い」とは「処理のしかたがうまい。手際がよい」こととある。
「手はず、手順、手際」のような作業の進め方をも表わしている。

例えば、刺身を包丁で切ることと大根を包丁で切ることは自ずとやり方が違う。
対象である魚と大根の違いもそうだが、切る包丁の形状も違い、切る目的も違えばコツは変わる。
鉛筆削りでも、木部を削るときと芯部を削るときはカッターは同じだが、方法が変わる。
このようにコツは作業の成否を握っている要領のことだ。
コツを承知した上で、適切なアクションを行えば作業はうまくいく。


カン・コツを2つに分けて考えてきたが、本当のところは根っこでつながっていることがわかる。カンで得られたことをコツに反映させたり、コツで必要なことをカンで探ったりすることはよくあることだ。私達は日常生活でも、仕事の上でもカン・コツを使い分け、あるいは協働させているのである。




カン・コツの教育はどのようにすれば良いだろうか。

カンは表現がしにくいものである。
一般に表現がしにくい内容は指導が難しく、暗黙知と呼ばれている。
カンは体験・経験によってもたらされる体感である。
従って、効果的に体感を獲得できるようにすればよいのだ。
そのカンが身につくような場面を意図的に設定すれば良い。
変動する内容であればまず、指標を覚えさせ、その後に変動する内容を体験させれば習得できる。
カンの指導で役立つ方法がある。カンを明瞭に体感できるように抽出して体験させることだ。
言葉を換えれば、そのカンだけを感覚として認識できるように工夫するのである。
私たちの実験では、音のライブラリーを作ったことがある。
音はどのように記憶するのであろうか。
体の中に音に関する引き出しがあり、この中から、今ある音を判別しているに違いない。
そこで、これを編集しストックさせてみた。
それらが確かな記憶となるように練習を組み立てると、確実な判別・判断につながることが分かった。


コツは謎解きのようなもので、「いかに作業すれば能率的にしかも良い成果が出るか」を極め、それを表現すればよい。
幸いにしてコツは表現が可能な場合が多い。
コツが伝わりづらいのはコツを整理していないからである。
作業はできるが指導はできないというのは指導者がコツを整理していないからだ。
困ったことに指導者は自然に行っているに過ぎない内容なのである。
つまり、どこがカンドコロだかわからないまま指導しているのである。
指導者がそのことを自覚さえすれば後は表現の問題となるだろう。


カン・コツは技能分析で整理できる。
技能分析は熟練者の行為・行動を整理する方法だ。
熟練者が持っている4つの内容を簡潔明解に整理するものである。
第1はできばえや、仕上がりに対する確かな認識だ。
これを目標到達概念と呼んでいる。これができていないのでは、方向を見失ってしまう。
良いサウンド、音の調和、スピード・・・、良い奏者はこれをよく認識している。
第2は仕事場や環境についてのことである。
コンサートでいえば、演奏会場、バイオリンの調子、会場の空気などである。これを場の概念と呼んでいる。
第3は時間の進行に伴って、どのようにアクションするかという内容である。
空間上の運動概念である。
指揮者の表現したい内容を奏者は具体的にどのように動作・運動を行えば良いかを体が知っている。
多くの手わざと判断が連続する。
第4はどのように技を実行するかという企画や段取りに関することだ。
今日の聴衆、雰囲気に合わせて、最高度に楽しめる音を創り出すことである。
手段と時間の概念と呼ぶことにしよう。

カン・コツはこのように分析的にとらえることで、より明瞭にすることができる。
カン・コツをまるごと、そのまま理解しようとするのは無理がある。
あるいは理解には遠い道のりとなるだろう。





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お知らせ
2018/3/20 大妻女子大学人間生活文化研究所から電子出版しました。
森 和夫「技術・技能論−技術・技能の変化と教育訓練−」


   "Skilled Labor on High-Tech Age"

  大妻女子大学人間生活文化研究所から出版 ( 2017/07/18 )
  ・誰でも、いつでも読める電子書籍です
  eBOOKのダウンロードは → こちら 

 Contents
 1. Thinking about Skill and Technology
 2. Clarifying the Science of Skill
 3. The World of “Wisdom” which “Technique” creates
 4. Skilled Work on High-Tech Age
 5. High-Tech Skills and Original Skills
 6. Technical Education on High-Tech Age
 7. The Path to High Level Skill
 8. Digital Task and Analog Task
 9. Engineer Education and Skilled Worker Education
 Reference
 Message from author

 

  
「技術・技能論−技術・技能の変化と教育訓練−」

  「ハイテク時代の技能労働」に加筆し、発刊。
  大妻女子大学人間生活文化研究所から出版 ( 2018/03/20 )
  ・誰でも、いつでも読める電子書籍です
  eBOOKのダウンロードは → こちら
 

 目 次
 1 技能と技術を考える
 2 技能の科学を明らかにすること
 3 「技」が創る「知」の世界−酒造りの技能の伝承と機械化をめぐって
 4 ハイテク時代の技能労働
 5 ハイテク技能と原初技能
 6 ハイテク時代の技能教育とその展望
 7 高度熟練への道
 8 デジタルタスクとアナログタスク
 9 技術者教育と技能者教育の狭間を考える
 あとがき
 著者プロフィール

  

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※森 和夫 略歴
職業能力開発、産業教育学・労働科学を専門とし、産業界を中心に活動。ライフワークは「技の上達」、博士(工学)。現在は技術・技能伝承、人材育成等のセミナー・講演の他、企業との共同研究、コンサルテーション、出版活動を行っている。現職は株式会社技術・技能教育研究所代表取締役。
主な経歴は東京農工大学教授(?2006年3月)、徳島大学教授(?2004年3月)、職業能力開発総合大学校教授、助教授、講師(?2000年3月)。学会活動は日本産業教育学会、日本人間工学会、人類働態学会、日本教育心理学会などで活動。海外活動はJICAよりマレーシア、ガテマラ共和国、ボリビア、フィリピンに海外短期派遣専門家として派遣され技術教育の指導者養成を実施した。



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※「技術と技能に関する93人の定義」はこちらで閲覧できます。
https://www.tetras.uitec.jeed.or.jp/files/data/199602/19960215/19960215_main0.html





「技術」と「技能」に関する93人の定義」PDFはこちら




←講談社文庫に「勘の研究」がある。黒田亮の論文





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